辞書をひく 11

投稿者: | 2015年10月27日

拙宅へお立ち寄りいただきましてありがとうございます。
本日の辞書をひくシリーズは、うっかり長く書いてしまったのでたたみます。ゾロサン話ではありませんが、ご興味のある方は、続きからどうぞ。

先日、所用で実家に行きまして、書類や本の整理などしてたところ、古い辞書が出てきました。1981年第42刷の広辞林第5版。いやあ、懐かしいな。装丁や活字からも昭和の香りが漂います。中身を見ても、説明文や単語がいかにも古めかしい。パラパラめくって気まぐれに楽しんでおりましたが、ふと確認しようと思いついた単語がありました。それは「妄想」。ワタクシたちが日々行っている行為です。現実とは違うことを思い描くことです。妄想、夢想、想像と、似たような言葉があり、なんとなく使い分けてますが、実際にはどのように規定されているのかなと気になったのです。おそらく漢字の通り「妄りに想う(みだりにおもう)」と書いてあるであろうと予想されます。みだりに……つまり、あれこれと思うことだと。まあ、ゾロサン界隈では、みだりにではなく、淫らなことを思うことが多いですが、それはおいておくとして。分厚い辞書をめくったところ、次のように書いてありました。

妄想(もうそう):根拠のないことを固く信じていること。またそのような判断、確信。病的原因から起こる場合が多く、安定性があるのを特徴とする。
妄想(もうぞう):①(仏教用語)心理に背いた判断。正しくない想念。みだらな思い。②淫事を夢に見て我知らず精液をもたすこと。遺精。夢精。

……はい?!ちちちょ、ちょっと!②は一体どういうこと?!そんな意味が?あわてて、いろいろと辞書を確かめましたが、新しい辞書には②についての記載はありません。古語とも思えないものの、念のため古語辞典にもあたりましたが、②の意味はありません。ということは、古語と現代語の間(明治頃から昭和後半)で生まれ、そして廃れていった言葉(厳密には、言葉ではなく意味)ということになりましょうか。それにしても何に基づく意味なんだ……謎。②だけ明らかにカテゴリーが違いますよね。医学系っぽい。ということは、時間がたつにつれて、②の意味は遺精、夢精という言葉に収斂、吸収されてしまったのだろうなと思います。定着しなかったんでしょう。ちなみに、各種辞書を調べているときに、英語では何ていうのかなー?と思って確かめてみたら、夢精はwet dreamって書いてあって笑ってしまいました。ウェットドリーム……夢を見てwet状態になっちゃうってことですかね。この辺りは外国でも同じですね。「妄想」が妄想をかき立てる、の巻でした。

 

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