まだ暗くなりきっていない宵闇の空に景気よく花火が打ち上がり、花火大会が始まった。
ドンと開いてパッと散る。
その潔いさまに心を決めた。
おれも男だ。玉砕覚悟で言ってやる。
のん気に空を見上げてる隣のマリモが、こっちを振り返った瞬間に
「好きだ」
クソ。
打ち明けた言葉は打ち上げた音に負けた。
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隣のマユゲの、妙に緊張している不穏な気配に振り返った。
何か言われたがよく聞こえない。
「あァ?」
聞き返したら蹴りつけられた。理不尽過ぎる。
白い顔は、次々と変化する花火の光を映し、いろんな色に変わってく。
いま赤いのは花火のせいか?
逃げられないよう手を掴む。
も一度言えよ。
三文字の言葉。
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ぶち上げたコクハクは不発だったはずなのに、いきなり手を握られてビビる。
しかもこっちを凝視してやがる。
顔が怖ぇよ、心臓止まるわ。
いや、マリモ相手にビビってる場合じゃねえ。
花火を反射して金に光る目から視線をそらさず、ぎゅっと手を握り返す。
参ったか。参っちまえ。
おれを好きになっちまえ。
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喚くか逃げるかと思ったのに。
瞬きもせず見つめ返してくる瞳。離れたくないとばかりに握り返される手。
脈アリだよな?
辺りの音に負けないくらい心臓の音がうるさく響く。
逃がす気なんてさらさらねぇから、手に力を入れて引き寄せた。
花火のしずくが落ちるように、おれのところへ落ちて来い。
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ぐっと引かれて距離が詰まる。
キスされちまうんじゃねぇの、おれ?
望むとこだが、何も言わないヤツの胸元に黙って収まるのは癪で抵抗してやったら間抜け顔だ。ざまあみろ。
主導権はおれが握る。
頭突きを食らわす勢いでマリモの口元めがけて飛びこんだ。
ガチュッ
ぶつかって盛大な火花散る初キス!
end