ゼロの可能性

期末テストが返却された。

点数は0。やっちまった。
でも、仕方ねえだろ?おれは繊細なんだよ。

腹立ちまぎれに答案用紙で折った紙飛行機を投げつけた。
ひょろりと飛んだ飛行機のとがった鼻先がクラスメイトの緑髪の男の頬をヒットして落ちる。

たいして痛くもない頬をさすって飛行機を拾い上げたゾロが、翼の上に記されたゼロを見てニヤリと笑う。

「いい点数だな」
「うるせぇ、てめぇのせいだ」
「おれのせい?」

不思議そうに聞き返す態度がムカつく。

てめぇが悪い。てめぇが試験直前にあんなこと言うのが悪い。
せっかく覚えた単語も公式も全部すっ飛んじまったじゃねェか!
おかげで今回の試験は散々だ。
何も手につかなし、何も頭に入らないってんだ。分かれよ、このバカマリモが!

おれが恨みをこめて睨みつけてもゾロは全く意に介さない。それどころか、とんでもないことに、避けていた話題に踏み込んできた。

「返事は試験後って言ってたよな。ってことは、答えは〇……つまりOKってことか」
「マルでもオッケーでもねぇよ!そりゃぁ、ゼロなんだよ!」
「ゼロ……、ラブってことか」
「テニスじゃねぇよ!キモイこと言うな!可能性がゼロってことだ!」
「何の?」

何のって、決まってるだろ。
おれが、おまえのバカげた告白を受け入れる可能性。つきあう可能性。両想いの可能性。
そんな可能性はゼロに決まってんだよ!

……と思って、今までずっとやってきたのに。
ただの悪友の顔で、おまえの隣で笑ってきたのに。
この気持ちを表に出すまいと死にそうな思いで我慢していたのに。

何なんだよ、チクショウ。
考えたら、なんだか泣きそうになって、やべぇ。バレないように逆切れて蹴りを一発。

「いってェな!何すんだ!」
凶悪な顔で怒鳴るゾロに、負けじと怒鳴り返す。

「てめぇの告白をキョヒる可能性と、友達でいる可能性と、片思いの可能性だ!クソったれが!」

唖然とした表情でおれの返事を聞いたゾロの顔が、じわじわと笑顔になり、最後には目元に涙を浮かべての嬉しそうな大笑いになったから留飲を下げた。

ゾロを泣かせてやった

こんなの、おれだけだ。

 

 

 

end