プロローグ 焼き魚には何かける?

 

「海のコックを探そう」

次の仲間は海のコックだとルフィが宣言していた通り、コックが5人目の仲間になった。

 

宝の持ち腐れに等しかったメリーのキッチンが使われ出した途端、おれ達の食生活は一気に改善された。

見たこともないような料理が並び、聞いたこともないような料理の名前が告げられる。

味はまァ、悪くない。というか、むしろいい。尤もそんなことをわざわざコックに言うのは、ただでさえ生意気なコックをつけあがらせるだけなので黙っている。コックの本職はコックなんだからメシがうまいのは当たり前で、言う必要もねェだろう。

コックの作るメシにとりたてて不満はないが、ちょいとばかり難があるとすれば、ヤツの作るものは、おれにはフクザツ過ぎる気がするってことだ。

例えば焼き魚。魚など焼いて塩ふって食うので十分……いや大根おろしは欲しいが、魚は塩焼きが一番ウマいとおれは思う。香ばしく焼きあがったばかりの魚にたらりと醤油を落として食えば、白飯は何杯でもおかわりできるってモンだ。それなのにコックが作る焼き魚は、何か塩以外のものがかかっていたり添えられていたり(何かが何なのはよく分からない)(とりあえず単純な塩焼きでないことは分かる)して、すぐに箸をつけるのがためらわれる。と言ってもグズグズしていたらルフィに残らず食われてしまう。警戒しつつも口にしてしまえば、それはそれでウマいので白飯がすすんでしまい、騙されたような気がして納得いかない。