『Love handles』

 

「腹回りの贅肉を、ラブハンドル、って言うらしいぜ」
 サンジはゾロの腹筋を撫でながら言った。
「こう、いちゃいちゃしながら掴むから、love handles なんだけどよ、てめェの腹には贅肉無ェなァ、掴めねェ」
 サンジの手はさわさわとゾロの腹回りを掴もうとしては空振りを繰り返している。
「てめェの腹にも、無駄なモンなんてひとっつも無ェじゃねぇか」
 ゾロはサンジのシャツの裾を捲り、自分がされているのと同じ様に腹筋を撫でた。
「まあなァ。でも、若ェ頃に比べたら、ちったァ弛んでねェか?」

 どこが。強いて言うなら肌か。弾ける様な若さは当然往時に比べれば落ちる。だがそれはお互い様。
 こうして互いの肌を弄る様になって幾年月。すっかり手に馴染む感触は、愛おしさを増しこそすれ、その魅力を減ずる事は無い。

(女房と畳は新しい方が良い、なんて言ってたオヤジも居たが…)
 ゾロは思う。
(気が知れねェな)
 そして思う。
(女房呼ばわりなんてしたら、どこまで蹴り飛ばされちまうことか)

 最近はゾロもサンジの操縦法を心得ており、滅多な事で滅多な所までは蹴り飛ばされる事もなくなった。
 成長したもんだ、とゾロが感慨にふけっていると、サンジの手が不埒な動き方を始めた。
「ハンドルは無くても、シフトレバーはあるな」
 ひゃっひゃっひゃ、俺しょうもない下ネタ言っちった。全く、ちょっと腹に触ったくらいでこんなにしやがって。お前も大概だなー。
 などとサンジは笑ったりぼやいたり忙しない。

「てめェの触り方がエロい所為だ」
 ゾロもサンジのソレに手を伸ばす。
「操縦桿、握らせろ」
 未だくったりとしていたソレは、みるみる握れる様になっていく。
「わ、ちょ、ちょっとタンマ!サイドブレーキ!」
 サンジの言う通りすっかり握れる状態になっていたソレを思い切り握って引き倒されて、ゾロが止まる道理など無い。
 お互いシフトレバーやら操縦桿やらを握り握られ、結局の所、あっという間にサンジはゾロに操縦される事になった。

「サイドブレーキ引いたのに…」
 事後の一服と共にそんな一言を吐いたサンジに、ゾロは呆れる。
 あんなしょうもない下ネタ言って触っておきながら、ストップをかけるとは何事か。
 そして、サンジの操縦が大分上手くなった自分に悦に入る。

 満足げに瞼を下ろすゾロをこっそりと見て、サンジはひっそりと笑う。
 どちらが操縦されているのか、分かったものではない。

 

fin

 

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「私だけが下ネタ考えた訳じゃないからねっ」とutaeさん@opzs.kesagiri.netは強く主張されておられました。ワタクシの邪な念をキャッチして増幅していただいた、ということでしょうか。

後書き的なオマケ