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事の真相はこうだ。
今日のサンジとの約束を、ゾロはウソップに話した。
昨夜、居酒屋で飲んだ時にだ。
ウソップの誕生祝いを兼ねてふたりで飲んだのだ。
仲良しなのだ。
誕生日当日、つまり4月1日はゾロは帰省しているので前日にと言う事で。
その時ウソップはゾロに誕生日のプレゼントをねだった。
それは。
ウソップの親友でもあるサンジを騙す事。
そして、嘘がバレた時のサンジの顔を写真で撮って、明日中にLINEで送ること。
サンジは果たして、泣くか笑うか怒るのか…?
それがを見届ける事が誕生日のプレゼントだと。
単にウソップは面白がっていたのだ。
ゾロはうーむ、と考えたがあっさり乗ってしまった。
何せ、ウソップはふたりのキューピット、いや、恋の狙撃手なのだ。
ウソップは随分前から気が付いていた。
ゾロとサンジの両片想いを。
サンジが高校生の頃、あらゆる場面で誰を探し、そして見つめていたか。
大学生になったゾロと偶然会って仲良くなり、食事をしながらゾロが無意識の様に、誰の名前を度々口に出していたか。
そして企てた同窓会。
幹事の権限でふたりを自然に再会させてくっ付けた、まさに天才的な恋の狙撃手、ウソップだったのだ。
ゾロがウソップの提案に乗った理由は、実はもう1つあった。
その話は今は内緒だ。
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頭を下げて謝るゾロをサンジはテーブルに着かせた。
とにかく食べろ、とサンジは次々に料理を仕上げ、ゾロの目の前に置いた。
今は海鮮ちらし寿司を幸せそうに、頬張っている。
「ホタテ、旨ェだろ?ちっといいやつだぜ」
ゾロの食べっぷりにすっかり機嫌を直したサンジが、笑顔でそう言った。
それを聞いたゾロが、あ、と思い出した様にテーブルを立って玄関へ向かい、紙袋を持って戻って来た。
それをゾロはテーブルに置いた。
「何だこれ?お土産か…?」
「おまえのジィさんからだ」
「…?ジジィから…?」
サンジが不思議そうな顔で中の物を取り出した。
「カルパッチョ…?」
「おう。ホタテがたっぷりだと」
「あと……スパークリングワイン…?」
サンジは綺麗なロゼのボトルを取り出して、じっと見た。
ラベルには“Barcarolle”と書いてある。
サンジは目を丸くした。
「“Barcarolle”って…。これ凄ェ人気のやつじゃん!」
「ああ。たまたま手に入ったって、おまえのジィさんも言ってたぜ」
「え、え、どーゆうこと?おまえジジィに会ったの…?!」
サンジはテーブルから体を乗り出してゾロに言った。
「ああ。会った。店が終わるの待って挨拶した」
「挨拶……?」
サンジは乗り出した体を引いて椅子に座り直した。
ゾロも姿勢を正した。
箸を置く。
「おまえのジィさんに、おまえと正式に付き合いたいと挨拶に行ったんだ。頭を下げにな」
「…………」
ゾロは少し俯いたサンジに手を伸ばして、テーブルに乗せていた手に、そっと自分の手を重ねた。
「俺は嘘のドタキャンで、きっとおまえは店に残ると思った。おまえがいる所でジィさんにきちんと挨拶をしたかった。だけどおまえはいなくて…ごめんな、サンジ。でもちゃんと話、聞いて貰えたぞ」
土産もくれたし、とゾロはサンジの手を強く握り締めた。
サンジの前でサンジの祖父に、正式な交際を認めて貰う様、挨拶をする。
認めて貰えるまで、何度でも頭を下げる。
そろそろ時期だと考えていたゾロには、かなりタイミングの良いウソップからの提案だったのだ。
それがゾロがウソップの話に乗った、もう1つの理由だった。
サンジは俯いていた顔を上げて、ゾロの手にもう片方の手を重ねて、ゾロをしっかりと見つめた。
何度か口を開くのに、上手く喋れない。
言いたい言葉はひとつだけなのに。
『ありがとう』それだけだ。
その代わりに言葉が滴となって、青い瞳から溢れ出て、ふたりの重ねた手を濡らした。
いく粒もいく粒も流れて。
二人の重ねた手を濡らした。
ゾロは1度その手を外し、席を立ってサンジの隣に座り直した。
そしてサンジの肩を持って自分と向き合わせて、両方の親指で涙を拭った。
何度も何度も何度も。
親指で拭った。
「キリがねェぞ。サンジ」
ゾロは笑いながら、自分の胸にサンジの顔を、そっと押し付けた。
金色の髪にキスをした。
そして肩を抱いた。
サンジの肩は震えていた。
暫くしてサンジがゾロの胸から顔を離して、にやっと笑った。
涙でぐしょぐしょの顔でだ。
「ゾロ…さ」
「ん?」
「あん時、俺に、もう泣かさないっつったよな?覚えてんか?」
「…言った」
「あー、俺泣いちまったー。あれから1度も泣いてねェのになー」
ゾロは、う、と眉を寄せた。
困ったちゃんの顔だ。
その顔を見たサンジが、またにやりとした。
「だから、さ。責任取ってくんない?」
「せ、きにん…?」
サンジはゾロの首に両手を回して顔を寄せて、耳元で囁いた。
「もう俺が泣かないように一生側で見張ってろよ。ゾロ」
ゾロ、のところでサンジは顔の向きを変えて、ゾロの唇の上で言った。
ゾロはそのままサンジの下唇を自分の唇で挟んで軽く引っ張った後、ぷるん、と離した。
「…おい。嘘じゃねェだろうな?嘘でも、もう遅ェからな」
ゾロはサンジの項に手を置いて、額をこつんとくっ付けながら言った。
薄茶の目がガチで素敵だ。
ゾロのその目に挑むようにサンジも見返した。
「嘘なんかつく余裕はねェよ。おまえをクソ好き過ぎて」
額を合わせたまま、ふたりはぷ、と笑った。
そして額の代わりに唇を合わせて、柔らかな口付けを交わした。
まるで誓いのキスのようだ。
その後食事を再開し、一杯食べて、一杯笑って、一杯喋って、一杯キスをした。
中でもオーナーシェフ自らが作った、ホタテがメインの魚介のカルパッチョは絶品だった。
未来の副料理長を唸らせ、ゾロの頬をパンパンにした。
全てを平らげたゾロはご馳走様を言う前に、サンジをじっと見つめて言った。
「やっぱ、おまえの作るもんが1番好きだ。サンジ。俺にしかわからねェ、おまえの味がする」
綺麗な薄茶の目を細めて、ゾロはそう言った。
まるでプロポーズのように。
それを聞いたサンジの頬は、さっきふたりでお祝いにと乾杯して、大切に飲み干した“Barcarolle”の様な、綺麗なロゼになっていった。
「ありがとう」
やっと、言えた。
それから風呂も一緒に入った。
当然、例の目的もクリアして、お互いにスッキリだ。
(内緒だが、ヌきっこ、だ。)
明日は休みだ。
今日のところは大人しく、抱き合って眠った。
今日のところは、だ。
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2016年4月1日PM 11:55
ウソップの携帯にLINEを知らせるライトが点滅した。
開いてみると、ゾロとサンジが写った写真が貼ってあった。
ふたりは笑顔で紙を持っていた。
ウソップがその紙をピンチアウトで拡大して見ると。
紙には、手書きで『婚姻届』と書かれていた。
青いペンを使っていた。
ロロノア・ゾロ
サンジ
証人
ウソップ
だ、そうだ。
「サンジ、泣いても怒ってもねェ…すげー笑顔だし。ゾロまでおんなじ顔で笑ってら…怖ェ。しかも嘘にもなんねェじゃん。……ガチだろこれ」
「あと、俺におめでとうとかは、ねェのかよ………おめでとう。おまえら」
証人は鼻を掻きながら、呟いた。
end
☆koma さん、“Barcarolle”3年目突入、おめでとうございます!
とにかく、大好きだから~♪♪♪
☆青い糸のふたりからも、祝福のキッスを♪♪♪
☆証人ウソップもハピバ~♪♪♪
べるき*