サンジ19歳。
実家のレストランでコック見習い。彼女いない歴19年。童貞。
女の子大好きなのに女の子に縁のないまま19年を過ごしてしまった。
幼稚園、小学校、中学校には確かに女の子がいた。けれど高校は保護者であるクソジジイの差し金で男子校だった。見渡す限り野郎で埋め尽くされた学校は死ぬほどむさくるしかった。唯一救いだったのは、彼女がいない言い訳に「俺、男子校だから女の子との出会いがなくてさ~」というセリフが堂々と使えて、世間的にも有効だったことだけだ。
しかし卒業してしまってからはその言い訳は使えない。彼女いないイコール男としての魅力なし、という図式になってしまう。
これはよろしくない。
人見知りが激しすぎて知らない女の子に声をかけられないとか、無口で内気すぎて女の子との会話が続かないとかいうわけでは全然ない。
むしろ全く問題ない、と思う。友達と合コンに行った時でもサンジはかなりうまく喋って「サンジくんっておもしろーい!」と女の子からは高評価(のはず)だ。ただその評価が、なぜか彼女という結果に結びつかないだけで。
(なんでかな~。俺、女の子とのコミュニケーション方法、なんか間違ってんのかな~?)とちょっと思っていたりしたある日。
サンジの家の郵便受けに、宅配ピザやら不動産やらの広告とともに見慣れないチラシが入っていた。
いつもだったらあっという間にゴミ箱行きのそのチラシを読もうという気になったのは、『恋愛』という文字が目に飛び込んできたからだ。
『恋の駆け引きと口説きのテクニックをあなただけに教えます!』
『素敵な女の子と大人の恋愛をしちゃおう!』
『ご好評御礼キャンペーン実施中。今なら初回授業料無料!』
『恋愛指南塾』
怪しさ満載だ。通常であればこんなものにひっかからない。そもそも恋愛テクニックを他人に教わるなぞ言語道断である。
しかし。
『女の子と携帯の番号を交換しあっても、なかなかその先にすすめないキミ』
『おもしろい人止まりでいつも終わってしまうキミ』
『そんな悩めるキミに必要なちょっとしたコツを、その道のプロが丁寧に教えます』
そのチラシはサンジの痛いところを実に的確に突いていた。
(まあ電話して話きくだけはタダだし)
(初回無料って書いてあるし)
煽り文句に逆らえず、ついふらふらと電話をかけてしまったサンジだった。